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加速する変動 -Accelerated Development-

この映画は、映画美学校の公開講座で観た。以前に観た作品だが、戦闘シーンの記録映像の実験的なフィルムの表現の部分以外、すっかり忘れていたようだ。
 この映画の監督コロラド州出身のトラヴィス・ウィルカーソンは、キューバの代表的なドキュメンタリー映画作家サンチャゴ・アルヴァレスの生涯を通して激動の20世紀を描いた。サンチャゴ・アルヴァレスは、アメリカでの留学の経験(その間は、炭坑で働くなど課過酷な労働をしている。その間、マルクス主義に目覚める。)があり、その後、兵役につくなら故郷でと、帰国する。そして、1950年代は音楽番組を制作しながら、バティスタ独裁政権に反対する運動に参加、その後、ニュース映画で映画を本格的に作り始めるそのとき、既に40歳になる。彼は「写真2枚と、音楽と、編集機をくれ。それで映画を作れる。」と言っている。キューバのドキュメンタリーは、音楽そのものなのだろう。彼の、映像と音楽のモンタージュは、観ていて体が動いてくる。しかし、映像では黒人の差別問題、白人警察の暴力が映し出される。反戦、非暴力、差別への怒りをリズムに乗せて伝える力を改めて知った。今では、それほど驚く技術ではないが。今でも多く見かける手段だ。そのルーツは、このキューバなのかもしれない。キューバの加速する様々な変動のなかで、映画に導かれていったサンチャゴ・アルヴァレスは、最後にはパーキンソン病と戦いながら、アメリカからの抑圧に苦しむ社会主義の故郷で亡くなった。
  ベトナム戦争の空襲をサンチャゴ・アルヴァレスも現地で体験している。トラヴィス・ウィルカーソンは、その回想シーンとして、ベトナム戦争の記録映像に実験的な加工を施している。フィルムがまっぷっつに割れて、まるで稲妻がベトナム戦争の戦闘シーンに直撃したようだ。これは元々ある映像素材を加工した実験映画でよく使われるような表現だが、鮮烈な印象で仕上がっている。
 また別のシーンでは、ニュース映画の持つ戦闘シーンや、被害を受けた住民の映像を、再生スピードを変えて逆再生などをして見せていく。(このビデオによると思われる、可変速度による再生はゴダールの「映画史」のような手法だ。)記録された映像素材が、何度も再生と逆再生を繰り返されていくのを眺めていると、虚しく揺れている風見鶏を眺めている気分になってきた。時代の波、運命に、さらに映画にももて遊ばれてしまう被害者の表情を眺めていると、カメラという恐ろしく忠実な機械が介在している事で映画は描かれていることに気づかされる。その、忠実さは不気味にすら感じられる。
 無意識に等しくなったカメラの忠実さによって記録された戦闘シーン、それをぶち壊す鮮烈で実験的なフィルム表現は・・・やはり圧巻だった。
 -追加で記載-
「加速する変動」を英語で訳するとAccelerated Development、Developmentはフィルムの現像も意味する。以前、8ミリフィルムを手現像、スチールの35ミリのフィルムを四缶現像できる缶に8ミリを押し込んで現像した。近代インターナショナルという会社で、ポジのフィルムの現像液を買った。とても楽しい経験だった。
何度も使い尽くされたニュースフィルムが観たこともない鮮烈な戦闘シーンとして再認識された。これがフィルムだ!映画だ!と改めて思う。僕は、ビデオ世代として、忘れてはならないのはフィルム表現の驚きと感覚だと思う。
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by barubuhutatabi | 2007-05-12 20:43 | 映画